最近、教育を経済学的な見地から解説した2冊の本を読みました。1冊はノーベル経済学賞
受賞者のジェーム・J・ヘックマン氏の「幼児教育の経済学」、もう1冊は慶応義塾大学の
教育経済学者の中村牧子氏の「学力の経済学」です。
この2冊の本は、アメリカで実際に行われた数々の研究のデータに基づいて書かれていますが、
共通して特に力説して書かれていることが2点あります。それは「人的資本投資」をする時期は
「幼児期」が一番重要なことと、そしてその内容は「非認知的能力」の向上を重視すべきこと
の2点です。
ここで投資を「教育投資」と限定せずに「人的資本投資」としているのは、「人的資本」とは
人間が持つ知識や技能の総称ですから、人的資本への投資はしつけなどの人格形成や、体力や
健康などのへの支出も含みます。必ずしも勉強に対するものだけではないという意味です。
普通、子どもの成長のためには、小学校より中学校、中学校より高校、高校より大学と年齢が
上がるほどお金や時間を増やすべきだと思いがちですが、特にアメリカで行われた教育経済学
の数々の研究データからの結論は、就学前つまり幼児期に一番投資すべきとのことです。
また、「非認知的能力」の重要性については、就学前に質の高い幼児教育を受けたことで
学力(認知能力)が上昇し、その結果成功したと思われがちですが、そのことよりより重要な
ことは、この「非認知的能力」、例えば「忍耐力がある」とか「意欲がある」といった人間の
気質や性格的な特徴、一般的に「生きる力」と呼ばれるものですが、この能力を特に「幼児期」
に伸ばすことが極めて重要であるとしています。
大切なお子様を預かり保育していく立場の者として、大変興味深い本でした。もちろんしつけ等
ご家庭での教育が重要なことは言うまでもありませんので、ご関心があれば是非お読みください。
尚、最近よくテレビに出てくる若手の社会学者の古市憲寿氏の書いた「保育園義務教育化」に
も同様のことが書かれていました。